性道徳の正常化


性道徳の正常化

─純潔教育を忘れずに─

坪田陽子著「運命の人と出会うまで」より抜粋

  日頃若い人に人生相談をしていて、男女交際の相談になったとき、今の若者の意識から、性ーセックスを、「夫婦の純愛の契り」として思う心が消えてしまっていることに驚かされます。
  専門学校の若い女性講師でさえ「交際してセックスしないなんて、考えられない。セックスして、合うかどうか確かめないで結婚してしまったら、不幸だ。」と言います。
  平成12年に数人の男子高校生と話した時のことです。

「エイズってどんな病気か知ってる?」
A君「あんまりよくは知らないけど、恐い病気?」
「何故恐いかと言うと、身体に抵抗力が無くなっていろんな病菌が侵入してきたとき、それを防ぐことが出来なくなっていくつもの病気を併発して、苦しんで死ぬからですって。じゃあ、エイズの感染ルートは知ってる?」
B君「うん、知ってるよ。エイズ患者とセックスした時。エイズ患者の血液が輸血とか、傷口から体の中に入った時。」
「そうね、それから母子感染。母親がエイズに感染しているとお腹の中の赤ちゃんも必ず感染しています。では、エイズにならないようにするにはどうすればよいでしょうか?」
B君「セックスしなければいい」
「そのとおり。防ぐ方法は、淫らなセックスをしないことね。」
C君「そんなのつまんないよ。それにそんなことになったら人類が滅亡するよ」
「大丈夫、人類は絶対に滅亡しません。
  男女が大人になると異性に興味を持つようになります。そして互いに心を惹かれる相手に出会い、いつもこの人と一緒にいたいと思うようになり、やがて結婚し幸せな家庭を造り、愛の結晶である素晴しい赤ちゃんが誕生します。結婚して奥さんと睦み合うのは、神様から許された聖なる業だから、素晴しいことなのよ。
  それが、最近は結婚もしていないのに、また結婚していてもフリーセックスとかなんとかいって誰でも受け入れて簡単にセックスするようになってしまったので、病原菌がフリーにどんどん入ってきてしまうエイズという病気が出てきたのです。人間がそれに気付いて正しい清らかな生活に戻るようにと言う神様の戒めなんでしょうね。」
A君「でも、そんなのつまんないよ。結婚するまで待てないよ。」全員が頷いています。

「ではみんなは、奥さんになる女性が、男を何人も知っている女性でもいいの?」
D君「やっぱり結婚する相手は処女の方がいいや」
A君を除いたあとの男子も頷きます。
A君「僕は遊んでセックスが上手になっている子のほうがいいかな」
「遊んでる奥さん貰って、もし、あなたが満足させる事が出来なかったらどうなると思う」
A君「浮気するかな」「そう、浮気するかもね。それでもいい?」A君「やっぱり嫌だね」
「男性はみんな、清らかで優しい美しい女性を妻に迎えたいのでしょう」
みんな頷きながら少ししんみりする。

「昔から『類は類を呼ぶ』『友は友を呼ぶ』といってね、清らかな女性を妻にしたいと思ったら、自分が清らかに生きていなくては、清らかな妻は来ません。今日からでも遅くありません、清らかに生きて下さい。」
E君「先生、僕の彼女は清らかだよ。僕だけなんだ。それで、彼女がやってくれってせがむのに、してやらないとかわいそうだよ。」
「少しもかわいそうじゃないわよ。赤ちゃんでも出来てごらんなさい。結局辛い思いをするのは女性なのよ。だから、彼女にせがまれたら断ったほうが彼女をいたわったことになるのよ。
  せがまれたら、『五年間待て』と言いなさい。五年過ぎたら、二十歳過ぎるでしょ。そうしたら少し早いけど親の許しを得て結婚すればいい。『それまで待て』と言いなさい。」
E君「僕その子とは結婚する気がないよ。だって好きじゃないもん。」
「ええっ、じゃあなおのこと、断らなくては。
  肉体の欲望に負けないで、理性で抑えて生きてください。自分を大切にして、相手の女性のことを考えて、清く正しく、美しく生きてください。
  素敵な方に巡り合ったら、結婚するまで清らかな交際をしましょう。両親始め皆さんに祝福されて結婚式を挙げ、正式に結婚の手続きをして結ばれた夫婦生活は、それは楽しく幸せなものとなります。
  日本はこれから世界の中の日本としてまだまだする事がたくさんあります。日本の将来はみんなの肩にかかっているのよ。それには、今しなくてはならないことに、スポーツや学問等に力一杯励んでください。日本の国をよろしくお願いします。」と結びました。

     ── 中略 ──

 帰りがけに「遊んで上手になった女性を妻にしてもいい」と言ったA君が、
「先生、今日からでもいいかなあ」と聞くので、「何が」と聞くと、
「清らかに生きるんだよ」と言うではありませんか。
「そう、気がついたとき正せばいいんですよ。清らかに生きてね。ありがとう。」
胸が熱くなりました。
「うん、僕たち清らかに生きるから、約束するよ。」と他の子供たちも口々に言うのでした。
  子供達の素直な心に触れ、教育者だけでなく、全ての大人が心して倫理に則った性教育を行っていかなければならないと思いました。

 十五年位前から、「結婚していない娘に赤ちゃんが出来た。どうしたらよいか」との相談が増えました。その都度「決して堕胎してはいけません。」と指導しています。
  ある日、親しいTさんが「娘のY子が妊娠して赤ちゃんは生みたいけど、結婚はしないと言って困っている。」と相談してきました。一人で生んで育てようと決意しているYさんに感心し祝福すると、Tさんは世間体を気にするのです。
「何を情けないことを言っているのですか。おばあちゃんがそんな事では、生まれてくる子が可哀想です。堂々と胸を張って、『うちの宝娘です』と紹介しなさい。きっと宝娘になり、あなたの家は繁栄しますよ。」
  Tさんは素直に言うことを聞いて「宝娘、宝娘」というものの、長男の結婚式を控えて、「式に参列した妹が、未婚で妊娠しているとわかったらどうしよう。」と心配するのです。
  それでも何とか結婚式は何事もなく終わり、Yさんは買い物途中で倒れました。8ヶ月にもなるのにお腹の中で赤ちゃんが育っていず、600gしかないというのです。
  「私のせいだ。私が『大きなお腹をした娘を結婚式に出したくない』と思っていたから、赤ちゃんが遠慮して大きくなれなかったのだ。
  ごめんなさい、赤ちゃん。皆が貴方の誕生を喜んで待っているから、元気で大きくなって生まれてね。」と言うと赤ちゃんは落ち着き、1ヶ月半後に1280gで無事女のNちゃんが生まれました。
  Nちゃんが3歳になったとき、YさんはAさんを連れ「この人と結婚します。」と言うのです。両親はあっけにとられているのですが、NちゃんはうれしそうにAさんに寄り添うのです。Aさんもまた、Nちゃんをまるでわが子のようにいとおしんで抱いています。
  何と相手の両親は「一度に娘と孫ができた。」と喜んでくださり、親戚を集め、結婚式をあげてくれました。その後二人の間には女の子が生まれましたが、少しも変わらずNちゃんを大切にするAさんを見て、本当の父子のように思えました。
「息子の家族と同居し、敷地内に娘夫婦がいて、大勢で仲良く幸せに暮らせるのも、あの時赤ちゃんを堕させず、授かった赤ちゃんをひたすら『宝孫』として大切に育てたおかげ、と感謝する毎日です。」とTさんは言っています。



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