マザーテレサのメッセージ

第四回国連世界女性会議


 第四回世界女性会議で北京にお集まりの全ての方々に、神の祝福のあらんことをお祈り申し上げます。私はこの会議によって、あらゆる人々が女性だけに与えられた役割を知り、それを大切なものと受け止め尊厳を与えること、ひいては女性たちの一生の内に神の計画を実現できることを希望します。
 私には、なぜ男性と女性はまったく同じだと主張し、男女のすばらしい違いを否定しようとする人々があるのか理解できません。
 神より授けられたものは全て善きものでありながら、全てが同じものであるとは限りません。私はよく「あなたのように貧しき人々のために尽くしたい」とおっしゃる方に対して、「私に出来てあなたに出来ないこともあり、あなたに出来て私には出来ないこともあります。しかし、共に力を合わせれば、神にとって何かすばらしいことが出来るのです。」と申し上げます。男性と女性の違いとは、それと同じようなものなのです。
 神は、私たち一人ひとりをお造りになりました。
 更に有難いことに、全ての人々を愛し、愛される存在にして下さっているのです。
 また、神の愛の一つの形が女性の愛で表され、別の形が男性の愛で表されています。どちらも愛するために造られていながら、それぞれの愛し方は個性が違い、「男性と女性は互いを補い合って完成されるもの」であり、神の愛を体現するには、どちらか一方よりも両方揃った方が、より神の愛に近づくことが出来るのです。

 女性特有の愛の力は、母親になったときにもっとも顕著に現れます。「母性は神から女性への贈り物。」私たちは男女を問わず、世界中に心からの喜びをもたらしている神の贈り物ー母性に、どれだけ感謝しなければならないことでしょうか。
 しかし私たちが、愛することや他者のために尽くすことよりも、仕事や社会的地位の方を大切だと考えたり妊娠中絶などをすれば、この神の贈り物を破壊することになりかねません。仕事、夢、財産、そして自由も、「愛」に換えることは出来ません。
 母性を破壊するものは神から戴いた、「女性として誰かを愛するという大切な力」を破壊するものなのです。
 神は私たちに「汝を愛するがごとく隣人を愛せよ」とおっしゃいました。まず正しく自分を愛し、それからそれと同じく隣人を愛しましょう。しかし神が自分をお造りになったことを受け入れないとすれば、どうして自分を正しく愛することなどできるでしょうか。
 男女の素晴らしい違いを否定する人々は、自分たちが神によって造られた存在であることを認めようとしませんし、それゆえに隣人を愛することも出来ません。
 彼らがもたらすものは、対立と不幸と、世界平和の破壊でしかありません。私が再三申し上げてきたように、「妊娠中絶は現在の世界平和にとって最大の破壊者」であり、男女の違いをなくそうとしているのは、皆妊娠中絶に賛成する人々なのです。
 子供たちが、愛し、神に祈ることを学ぶのにもっともふさわしい場は、「家庭」です。家庭で父母の姿から学ぶのです。家庭が崩壊したり、家庭内に不調和が生じたりすれば、多くの子供は愛と祈りを知らずに育ちます。家庭崩壊が進んだ国は、いずれ多くの問題を抱えることになるでしょう。私は、とりわけ裕福な国々で、愛情不足と疎外感から逃れるため薬物に向かう子供たちを、幾度となく目にしてまいりました。
 しかし、家庭の絆が強く家庭が円満であれば、子供たちは父母の愛の中にかけがえのない神の愛を見ることが出来、自分の国を愛と祈りに満ちた場所にしていくことが出来るのです。なぜなら、「父親は父親らしいやり方、母親は母親らしいやり方で神の愛を体現して見せる」からなのです。共に祈る家庭が離れていくことはありません。
 家庭が一つであり続ければ、神がその一人ひとりを愛してこられたように、人間も互いに愛し合っていけるでしょう。愛のあるところには常に安らぎが生まれます。

 (平成17年7月8日『歴史はいのちの反発と和合によって動く』P、.34〜41より転載させて頂きました。)


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