マザーテレサのメッセージ

「胎児は人間ではないのか」


 現在、平和を破壊する最も危険なものの一つに、人工中絶があります。親が子供を殺すという恐ろしいことです。ここで皆様と共に一つの美しい決意をしたいと思いますが、それはこの国この東京で唯ひとりとして、男も女も子供も,そしてお腹の子供も、愛されず見捨てられていくということのないように、ということです。
 日本は大変美しい国です。大変多くのものを神により与えられました。皆様の持っていらっしゃるものを持っていない国は沢山あります。しかし、何故日本という国は、まだ生まれないたった一つの小さな生命を恐れるのでしょうか。もう一人食べさせなければいけない、教育させなければならない、自分に不都合なことがある、そういう理由で、親がわが子を恐れて、殺すことができるのでしょうか。こんなに物があふれている国で、何故そういうことをするのですか。
 その子は、神の似姿に造られた子です。愛するために生まれてくるはずの子供です。世に対する神の太陽となり、世の中を照らしてくれる新しい生命のはずです。何故そんな子が死ななければならないのでしょうか。
 若い男女が清らかな愛を持つことは自然のことであり、美しいことです。男女の愛という美しいものが、なぜ中絶と言うような結末に終わるのか、その点を考えて頂きたいと思います。
 若い者が一つの過ちをしたからとて、それを咎めたり、さらに中絶するというような大きな過ちを犯すことを、社会が強いることはいけないと思います。その若い親を、皆が助けてあげなければなりません。無垢な、まだ生まれぬ子を殺すということは、大きな罪だと私は思います。
 若い女性は、何も自分が望んで子供を殺すわけではありません。多くは親の反対とか、社会の目の圧力によって、自分の子供を殺さざるを得なくなっているのです。まず親が、そして社会が、それを赦し、認めていかなければならないと思います。
 そのためにも私は、私の会のシスター達を日本に連れて参りました。いつも我々のドアは開けられています。未婚の母、阻害されている人達は、いつでも我々の会に来てほしいのです。たった一つの過ちのために社会が見捨てたものを、我々は迎え入れたいと思うのです。
 皆様は勇気を持って優生保護法と闘い、同時に養子縁組がより簡単になるように努力して頂きたいと思います。
 子供がなくて、子供が欲しいという家庭は、いくらでもあるはずです。私達は、養子縁組という武器を使って、中絶と闘っています。そして愛されず見捨てられている子供が、どんどん新しい家庭に迎え入れられ、どんなに愛され喜ばれ、平和に暮らすことができるか、それを皆様は見ることができるでしょう。それこそ美しいことであり、社会に喜びと、平和と愛とをもたらしましょう。是非そういう法律的な面で私達に協力して下さるよう、心からお願い致します。
 神は皆様を心から愛しています。皆様は国民の光となって国民を導いて頂きたいと思います。あなた方は、偉大な徳によって国民を導いていく方たちなのです。

               日本教文社刊「胎児は人間ではないのか」より


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